寄せ書き寄せ付けない。ゼッタイ。
職場の田辺 心(こころ)ちゃんが退職することになったので、寄せ書きを送りましょう!って話になったの。詳しいことはわからないんだけど、どうも田辺 心(こころ)ちゃん実家の跡をつぐことになったらしい。
ココちゃんって私は呼んでて、(ココ シャネルみたいでしょ!?)妹みたいにかわいがっていた後輩だったので、とっても残念です。
ココちゃんの大好きなハローキティーがプリントされた大きな旗をみんなで割り勘して購入したので、ここにサヨナラのメッセージを書くことになりました!
ってことで、朝からみんな「バレたらいけないから、こっそりね」って旗を社内でパスしてます。
ココちゃんとの思い出といったら、花火大会が外で行われてて、みんなで勤め先の窓から眺めたことかな〜。
いっちばん綺麗だったのはやっぱり最後の花火。大きくて赤くて丸くて、、その花火の輝きがね、ココちゃんの瞳の中にも映って、思わず惚れ惚れしちゃったの。
それで私、「ココちゃん私、ココちゃんに惚れちゃいそうだよ〜!」って言ったら、「気持ちは嬉しいんだけど、私そういうのには興味なくて、、」ってなんか勘違い?でフラれちゃって、そういうんじゃないってば〜!!って私が言って、私はなんか2時間後くらいにそのやりとり考えてたらちょっとこのやりとり、この女の傲慢だったんじゃない!?って気がしてほんとむかついて、自分に話しかけてくる人をどいつもこいつもね、自分に性的欲求を抱いてるって思っちゃうその意識どうなの?って話なの。
でまぁそれ以来しばらく無視してたんだけど、なんか辞めるっていうから、まぁ辞めるときくらい笑顔で?送り出してやろうって話?みたいな。
でもちろん旗は私には回ってこない。
みんなでコソコソお金を払って、仲良しお昼ご飯一緒に食べる組だけで、旗を回してるってわけ。
これもちょっと変なんだよね。だって私お昼ご飯は一緒に食べてたもん。一方的にココちゃんだけ無視はしてたけど、同席だけはこの7ヶ月続けてきたのね。一応仲間じゃんこれ。
熱帯魚会話してないでしょ?けど群れてるでしょ?仲間だから。
じゃ寄せ書きくらい、いいじゃない。
それでさっきお昼休みに、「ココちゃん辞めちゃうなんて残念だよ。」って言ったら
もう周りの女子たち驚き。私の久しぶりのココちゃんへの声かけに、感動!
ココちゃんもこれには驚いたらしくて、言葉を失って、、、ってあれ?いない。
ココちゃんいない。
私、壁に話しかけてた。
そう。ココちゃんなんて人は存在しないのだ。
私がずっと無視していると思っていた影の薄いあの女はそもそも存在しなかったのだ。
パーテーションにぼんやりと映る私の影こそが、ココちゃん。
じゃぁあの旗は?あの旗はなんだっていうの!
聞いたところによるとやめるのは川崎さんという人で「川崎さんと親しかった人の間で寄せ書きを」って話だったみたい。
私、川崎さんが辞めることすら聞いてなかったっていうか、そんな人がいたことすら知らなかった。どうも事務と掃除をしていたあのオッサンが川崎さんという人で私という女を前にしながら私に声をかけてこなかった川崎さんが本当に許せない。
ねぇココちゃん、私、大丈夫かな。少し疲れているだけかな。
このシチュはまるであの歌だね。
「さっちゃんはね、
さちこっていうんだ、
ほんとだよ、
だけどちっちゃいから、
自分のことマッパで
騒ぐなよ。
おかしいね?
ヴィンセント。
」
By ディルアングレイ